2-2. システムの構成 (その2: ミキサーの中身)
1. 伝統的なアナログミキサー (例: Yamaha MGシリーズ)
練習スタジオでよく見かけるヤマハのアナログミキサーを例として説明します。ドラマーが操作することは少ないとは思いますが、ボーカリストに任せず、自分でもある程度理解しましょう。
他社の製品も同様です。なれないと操作が難しい、押すべきスイッチを押し忘れて音が出ない、など悩むことがあります。練習スタジオの場合は、店員さんが設定してくれるはずです。
- 商品ページ https://jp.yamaha.com/products/proaudio/mixers/mg_series_xu_model/index.html
- 取扱説明書は「ダウンロード」から
- 7.1kgもあるので、持ち運びには少々重い
- 入力
- モノラル (マイク/ライン) 8本用 MG16(XU) (他にステレオ入力 4/マイク 2) — モノラル換算で16入力
- モノラル (マイク/ライン) 12本用 MG20(XU) (他ににステレオ入力 4/マイク 4) — モノラル換算で20入力
- 出力
- メイン出力 (ステレオ) –> 客席用メインスピーカー
- モニター出力、ヘッドフォン出力 –> PAオペレーター用 (選択したチャネルの音/すべての音など切り替えられる)
- AUX/FX (外部) Send 4 — PRE (フェーダ前)、POST (フェーダ後)
- PRE: フェーダー設定に関係なく信号が出る
- POST: フェーダー設定に従う
- MG20XU: Aux1 (pre固定)、Aux2 (pre/post切り替え)、Aux3 (post固定)、Aux4/FX (post固定)
- グループ出力 4 — グループ1-2、3-4の2セット
- USB入出力 (XU) — メイン出力 (ステレオ)、BGM等入力 (ステレオ)
- 内蔵イフェクト (XU) — リバーブなど
- 外部イフェクト: イフェクトリターン入力端子がないのでステレオライン入力端子に戻すしかない (そのチャネルのFX sendは0に)
- メイン出力と別のステージモニターにはリバーブはかけられない (ボーカルで欲しい場合がある)
- ほしいが簡単に繋げないイフェクト: ゲート (エクスパンダー) — 用途: ノイズ軽減とドラムのタムにかけたい
- 大型ミキシングコンソールには、ゲートが内蔵されているか、チャネルごとにイフェクタを挿入する端子がある
音声の流れ (MG20UXの例、略図) — 音が出ないときは☆マークの箇所をチェック
かなり省略しましたが、それでも複雑に思えるかもしれません。スピーカーやアンプが電源ON/OFF時のブチ音で壊れないように、電源を入れるときは、ミキサー、パワーアンプの順、切るときはパワーアンプ、ミキサーの順に切りましょう。
各出力の音量バランス
各チャネルのフェーダーでは、客席で聞く音のバランスを調節するので、メインステレオ出力と同じ音をステージに出すと、演奏しにくいバランスになります。例えば、ギターアンプから十分に大きい音が出ている場合、客席にPAからスピーカーから出す音が小さい、または0になります。一方でステージにいるドラマーには、客席に向けたギターアンプの出音がほとんど聞こえないということが起こりえます。
- メイン出力 — コンプレッサは控えめ、ローカットは普通ON、イコライザは聞きやすくハウリングしない設定に
- まずはボーカルがしっかり聞こえる
- ギターアンプやベースアンプの出音、そしてドラムの生音で足りない分をPAスピーカーから出す
- ライブではPANを極端に左右に振らない。着席位置で音が変わりすぎないようにする (という話)
- ステージモニター出力 — 各バンドメンバーに必要な音を届ける (詳細は別途)
なお、ミキサーの入出力端子とステージ上のマイク等入力端子、スピーカーへの出力端子は、16または32チャネル以上の集合ケーブルで延長されているのが普通です。最近はディジタルコンソールと合わせてディジタル化する傾向にありますが、まだアナログ機器が主流と言えます。
2. ディジタルミキサー (コンソール) (例: Behringer X32)
まだまだ高価です。操作したことがないので、商品説明と「クイックスタートガイド」だけに基づく解説です。ライブPAコンソールとしての基本機能はアナログミキサーと同様ですが、ディジタルゆえの利点が色々あるようです。簡単に運べる重さではないですが、いまライブハウスを起業するなら、このようなコンソールが欲しいところです。他社製品では、SoundCraft Si シリーズ、Yamahaなど色々あります。
- X32本体 販売価格 22万円 (20kg)
- PCをUSB接続して32チャネルのDAWとして使える (ライブレコーディングができるはず)
- ステージまでの、ディジタル延長ボックス S16 (7.6万円 4.7kg) を2台 — 16入力/8出力
- LANケーブルで接続するオーディオインタフェース
- これを使うとX32本体のオーディオインタフェースが無駄になる
- ステージモニタ出力を最大16系統出せる
- S32なら1台で済むが、ステージの1箇所に32より、16を2箇所の方が使いやすいかも
- 日本語版のクイックスタートガイドは、サウンドハウスの商品ページで読めますが、詳しい取扱説明書はBehringerのWebページの英語版しか見当たりません。購入すれば日本語の取扱説明書が付いてくると思います。
アナログミキサーにない機能
- PAコンソールとしての機能
- イフェクトが自由自在 — 各チャネルにゲートあり、順番も変更できる、ライブ用なので遅れ(latency)がとても小さい
- 色々な設定を記録できる
- リモートコントロール — PC(Windows/macOS/Linux) またはiPad/iPhone
- フェーダーが設定した値に沿ってモーターで動く
- 16パートのパーソナルモニター (機器は別途) が使える (自分の好みでバランス調節できる)
- PCをつないでマルチトラック録音できる
以上、個人には夢の機器ですね。10年後くらいにこのようなミキサー/レコーダーを買おう。